心のとびら

先生から伝えたい言葉

生徒の皆さんの心に留めておいて欲しいことを先生が交代で話をします。

 おはようございます。宗教科担当のNです。
 皆さんは、今日が聖和にとってどのような日か、もちろんご存知ですよね?
 ルカによる福音書に記される「善きサマリア人のたとえ話」は、現在の私たちにも通じるたとえ話です。「隣人を自分のように愛しなさい」という律法の教えについて、イエスとの会話の中で律法の専門家は「では、私の隣人とは誰ですか?」という問いかけをします。もしかしたら、彼は「隣人になる人」と「ならない人」という明確な区別をしたかったのかもしれません。しかし、イエスが語ったこのたとえ話は、追いはぎに襲われた一人の人を助けたのが、「汚れている」と嫌われていたサマリア人だったというものです。どんなに律法の教えを理解し、守っている人でも、「隣人を自分のように愛する」ということが必ずしもできるわけではないことを教えています。サマリア人は自分が周りからどう見られているのか、どう思われているのか、そんなことは関係なく、ただ目の前で起きている状況で自分ができることを行いました。
 今から64年前の今日、善きサマリア人修道会のシスター方は、戦争中、オーストラリアと敵対した国にも関わらず来日し、広島・長崎の原爆による惨状を目の当たりにしました。学校建設という目的はありましたが、まずは目の前で苦しむ人々を救うために尽力したというのは、皆さんにお配りしている『ぶどうの木の下で』にも記されています。

 どうか今日一日、来日されたシスター方を思いながら過ごしてください。聖和で学ぶ皆さんが、目の前で苦しむ人がどのような人であろうと、自分ができる限りの救いの手を差し伸べ、シスター方が聖和という名に思いを込めた「平和を創る女性」として育っていくことをお祈りして、今朝の話を終わります。

 

 8月の終わりに、映画「関ヶ原」が封切られたので見に行きました。石田三成と徳川家康による天下分け目の戦いを描いた作品です。
 私にとって、司馬遼太郎の「関ヶ原」は忘れられない作品です。ずいぶん昔、正月に3日間かけて7時間ドラマとして放送されました。調べてみると、今から36年前、TBS開局記念30周年として制作されたようです。こんなことが机に座ったまま調べられるというのは、本当に便利な世の中になったものです。

 圧巻の内容で、ドラマを見終わって「家康というのはとんでもない悪いやつだ」と憤慨したことを覚えています。印象が強烈だったので、原作を読んでみようという気になりました。今まだ書店の目立つところに置いてある文庫本3巻です。
 読み進むにつれ、ドラマの感動がよみがえるとともに、いわゆる歴史小説というものが様々な記録に基づいて書かれていること、何百年も前の文書が捨てられず数多く残っていることに新たな驚きがありました。

 実はそれまで歴史にはほとんど興味がなかったのです。おそらく年号を覚えるのが苦手だったからでしょう。
 これをきっかけとして、歴史小説を読むようになりました。教科書の事実の列挙と違って、主人公の目を通して見る歴史はそれぞれの出来事が色を帯びているのです。

 昔の人の一生はたかだか5,60年ですが、何人もの主人公の人生をたどることで、日本史2千年のピースが重なりながら少しずつ埋まってきます。1冊読むごとに新たな発見があり、自分の歴史観ができあがっていくことは楽しみになりました。それは一つ一つの定理を積み上げて体系を形作っていく数学の勉強に似ているように思います。

 あれから36年、今でも読んでいる本の大半は歴史物です。若いとき、この「関ケ原」に出会っていなければ私の歴史観は全く違ったものになっていたことと思います。
 ただ、今実感していることがあります。年を取るにつれ、感動の度合いが小さくなってきたことと、読んだ内容をすぐに忘れてしまう記憶力の衰えです。
「本は若いときに読め。」
 読書週間も中程になりました。私が今身にしみて感じている、高校時代の先生のことばを皆さんにも送ります。

 

 

「昔の善く戦う者は、先ず勝つべからざるを為して、以て敵の勝つべきを待つ。 勝つべからざるは己に在るも、勝つべきは敵にあり。」
 これは、勝つためにまずやらなければいけないことは、「負けないため」の準備だという意味です。 昔から戦いが上手な人は、すぐに相手を責めるのではなく、負けないための準備をしっかり整えて、勝つチャンスをじっくり待っていたと伝えています。

 この言葉は『孫子』という書物に書かれている言葉です。 孫子は、今から2500年ほど前に中国で生まれた書物です。このころの中国は、春秋戦国時代と呼ばれ、いろいろな国がひしめき合って、戦争が繰り返されていました。 孫子を書いた孫武という人は、そうした国の1つである呉の軍師で、戦いに関して優れた才能をもっていたと伝えられています。
このころの戦争は勝つか負けるかは、偶然や運によるものが大きいと信じられていました。国としてどう戦うかというより、兵士個人がどれだけ勇敢かが重要とされていました。しかし、戦争が長引くにつれて、兵士の数も増えてくると、共通の考え方や戦い方が必要になってきました。
『孫子』はこうした時代を背景にして生まれた書物で、しっかりとした考え方や戦い方によって勝つことが大切だと説いたものです。
『孫子』は国を越え、時代を越えて、たくさんの人に読まれています。 現代でも、マイクロソフトの創業者ビルゲイツや、ソフトバンクグループの代表者、孫正義さんも孫子を愛読書にしていたといわれています。
孫子には、困難に立ち向かったり、大きな決断をしたりするときに、どのような行動をすべきかのヒントがつまっています。 最初に紹介した言葉を現代に置き換えて考えてみると、 まずは、自分にできることをきちんとして、そのうえで、相手に立ち向かう。 つまり、テストでいい点数をとりたい、試合で勝ちたいと思うのなら、相手や周りを気にせず、まずは自分ができることをしっかりすることが大切ということを説いています。
みなさんも、毎日の授業や課題、部活動の練習にしっかり取り組み、勝つためのチャンスを広げてみませんか?