心のとびら

先生から伝えたい言葉

生徒の皆さんの心に留めておいて欲しいことを先生が交代で話をします。

 東京オリンピックの開会式が予定されていた昨年7月24日、東京のコロナ新規感染者が初めて300人を超え、小池都知事が「みなさんの協力で止めていかないと幾何級数的に増えていく」と発言したことがテレビで紹介されました。
 この言葉にコメンテーターの長嶋一茂が「勉強したことないんで、どういう意味だかよく分からない。」と噛みつきました。

 「幾何級数的に増える」とは、2倍、2倍、2倍ととんでもなく増えていく様子を表した言葉で、「幾何級数」は英語geometric-seriesの直訳です。幾何とは図形のことですが、2倍、2倍と掛けていくのがなぜ図形に繋がるのでしょうか。

 昔、計算の表す意味は重要でした。自然数がものの個数を表すのに対し、実数はものの長さを表すもので、長さを掛け合わせて求まるのは面積や体積しかありません。これが、かけ算=面積=図形 と繋がったものと思われます。

 かけ算=面積、と考えると困ったことが起こります。私たちが普通に計算している
3x+5 という計算でも、3xは面積、5は長さとなり、面積と長さを足すことに意味がなくなるからです。

 この問題を解決したのが、有名な哲学者デカルトでした。彼はかけ算の答えもまた長さと考えられることを示して3x+5を意味のあるものにしたのです。4千年の数学の歴史の中でわずか400年前のことでした。

 今私たちが座標やグラフを用いて様々な変化をイメージできるのはデカルトのおかげです。学校で学んでいることは、すべて人類が長い年月をかけてたどり着いた苦労の成果なのです。勉強しないともったいないと思いませんか。