8月の終わりに、映画「関ヶ原」が封切られたので見に行きました。石田三成と徳川家康による天下分け目の戦いを描いた作品です。
 私にとって、司馬遼太郎の「関ヶ原」は忘れられない作品です。ずいぶん昔、正月に3日間かけて7時間ドラマとして放送されました。調べてみると、今から36年前、TBS開局記念30周年として制作されたようです。こんなことが机に座ったまま調べられるというのは、本当に便利な世の中になったものです。

 圧巻の内容で、ドラマを見終わって「家康というのはとんでもない悪いやつだ」と憤慨したことを覚えています。印象が強烈だったので、原作を読んでみようという気になりました。今まだ書店の目立つところに置いてある文庫本3巻です。
 読み進むにつれ、ドラマの感動がよみがえるとともに、いわゆる歴史小説というものが様々な記録に基づいて書かれていること、何百年も前の文書が捨てられず数多く残っていることに新たな驚きがありました。

 実はそれまで歴史にはほとんど興味がなかったのです。おそらく年号を覚えるのが苦手だったからでしょう。
 これをきっかけとして、歴史小説を読むようになりました。教科書の事実の列挙と違って、主人公の目を通して見る歴史はそれぞれの出来事が色を帯びているのです。

 昔の人の一生はたかだか5,60年ですが、何人もの主人公の人生をたどることで、日本史2千年のピースが重なりながら少しずつ埋まってきます。1冊読むごとに新たな発見があり、自分の歴史観ができあがっていくことは楽しみになりました。それは一つ一つの定理を積み上げて体系を形作っていく数学の勉強に似ているように思います。

 あれから36年、今でも読んでいる本の大半は歴史物です。若いとき、この「関ケ原」に出会っていなければ私の歴史観は全く違ったものになっていたことと思います。
 ただ、今実感していることがあります。年を取るにつれ、感動の度合いが小さくなってきたことと、読んだ内容をすぐに忘れてしまう記憶力の衰えです。
「本は若いときに読め。」
 読書週間も中程になりました。私が今身にしみて感じている、高校時代の先生のことばを皆さんにも送ります。