心のとびら

先生から伝えたい言葉

生徒の皆さんの心に留めておいて欲しいことを先生が交代で話をします。

おはようございます。

私は今から約3年前ホテルのコンシェルジュというお仕事をしていました。ホテルは宿泊するだけの場所ではありません。見学にいらした方、レストラン利用の方、カフェでくつろぐ方、結婚式・披露宴を行う予定のカップル、会議に出席する方…様々な目的でお年を召した方から赤ちゃんまで実に様々な方にお会いできる素敵な場所です。しかしながら、時として全く予想外のご質問を受けることも多々ありました。

ある日、お食事にいらした年配の女性のお客様をお見送りしていた際に、「こちらのホテルには、窓がいくつあるのかしら…」とふと漏らされたことがありました。ホテルマンになって間もない私は正直、何とお答えしたらよいのか一瞬凍りつきました。なぜなら、恥ずかしながら、当時の私は仕事をする側からの目線だけで、窓がこんなにいっぱいだと掃除が大変だな… と思うだけで、窓の数など考えたことすらなかったのです。
数あるホテルの中から、私たちのホテルを選んで足を運んでいただいたお客様に、「できません」「分かりません」は絶対に通用しません。だからと言って、適当に流したり、嘘をつくのはもっての他です。その事だけは肝に銘じていたことでした。しかし、だからと言ってその時お帰りになられるお客様を待たせて、館内のあちらこちらにある、大小さまざまな窓を数えてまわることが親切なことだとは思えませんでした。

その答えが正しいものかは分かりませんが、とにかく当時の私の中では精一杯、失礼にならないようにとお答えをしました。
「お客様、申し訳ございません。私、毎日館内の窓を磨いておりましたが、実は、いつも窓から見えるすてきな景色に見とれているばかりで、今まで窓の数まで気に掛けたことはございませんでした。教えていただき、本当にありがとうございます。お客様のまたのお越しの際までに、館内の窓の数と一番素敵な景色が見える窓を探してみたいと思います。その際には、ぜひご案内をさせて下さい。」
…このようなことをもっと自然に言ったと記憶しています。

残念ながら、そのお客様にお伝えする機会がないままになってしまいましたが、その後、館内の飾られている絵画について、建物の木材や石材の名前、産地、メーカーなど気になったことは何でも調べました。次にどんなお客様から、どんな質問がきても絶対に答えたいという思いから始めたことでしたが、ホテルのことを知ってますます愛着が湧いてきました。
人間誰しも知らないこと、分からないことがあって当然だと思います。大切ことは、その後どう考え、どう行動するかなのではないでしょうか。

学校では、忘れ物をした時の「忘れました」、授業で指名された時の「分かりません」という言葉をよく聞きます。しかし、それはただの報告にすぎないと私は思います。だからその後にあなたが何をしようとするのかを考えて、できれば口に出して、行動して、はじめてあなたの「すみません」という気持ちが相手に伝わるのではないでしょうか。誠意を見せることは、人と人とが関わり合う中でとても大切なことだと思います。あなただったら、「すみません」の後に、どのような言葉を付け加えますか。または、どのように行動しますか?

さて、少し偉そうなことを言いましたが、もちろん、私が中学生・高校生の時にそんな事を考えていたかと言うと…働かせていただくようになってから、周りの人たちから学んだこと、気付かされたことが沢山あります。私が気付いたことを自分の後輩である皆さんたちに、少しでも還元できたらと思っています。
私は、聖和の皆さんには、周囲から自ら学ばせていただくという常に謙虚な姿勢で、そして、ただ指示を待つのではなく、自分自身で考え、行動ができる人になってほしい。「やっぱり聖和出身の生徒さんは相手への気遣い・心遣いがすばらしいね。」そう一人でも多くの人に思っていただけるような人になってほしいと願っています。そのような思いで、私はこの聖和女子学院でお仕事をさせていただいています。

さあ、今朝もすてきな笑顔と挨拶から一日を始めましょう。