心のとびら

先生から伝えたい言葉

生徒の皆さんの心に留めておいて欲しいことを先生が交代で話をします。

 おはようございます。早いもので遡ること約3ヵ月前のことになりますが、私の結婚に際して温かいお祝いの言葉をくださったみなさん、本当にありがとうございました。この場を借りて御礼を言わせてください。
 さて、その結婚の報告もあり、約2年半ぶりに以前働いていた職場のホテルを訪れたときのことです。
ホテルに一歩足を踏み入れた時、ブランドスーツに身を包み、首にはおしゃれなスカーフを巻いて、とびきりの笑顔でお客様をお出迎えしている元同僚がとてもまぶしく輝いて見えました。一緒に入社した同僚は、今ではチーフと呼ばれ、後輩に慕われている様子でした。その光景を見て、良かったねと微笑ましく思う一方で、その同僚に自分の姿を重ねて、もし私が今もここで働いていたら、今頃私は、彼女たちと同じように今もあのスーツに身を包み、「○○チーフ」と呼ばれていたのか…そう思うと何だか少し切ない思いがしました。懐かしい思いと同時に、何だか一緒に働いていた同僚たちがすごく遠い存在にさえ思えました。
 そんな思いに浸っていると、元同僚がこっそりと耳打ちしてきました。「実は私、10月いっぱいなんです。」つまり10月末で退職するということでした。理由を尋ねると「精一杯頑張ってきましたが、精神的にも、体力的にも…もう限界です。」もともと体が弱かった彼女には、ホテルフロントの仕事は相当な負担になっていたに違いありません。彼女はそう答えると、だからこそ残りの時間を後輩の育成のために精一杯使いたいと涙を流しながら答えました。
 瞬時に、はっと現実に引き戻されました。「隣の芝生は青く見える」…まさにその通りだと思い知らされた瞬間でした。今の自分が与えていただいている聖和女子学院の英語科の教員であるということを満足にできていないのに、他を少しでもうらやましいと感じた自分を何だか恥ずかしく思いました。
 こんなはずじゃなかった。あの人がうらやましい。なんであの人が…。などの不平不満は生きている限り沢山あります。でも、考え方を変えると、不平不満が出てくるということは、自分自身がこれから一所懸命に取り組むことで、良い方向に変えられる部分が、まだまだ沢山あるということではないのでしょうか。そう考えると、「よーし!やるぞ!」と何だかやる気が湧いてきて、表情も明るく笑顔になったような気がするから不思議です。
 Sr.渡辺が教えて下さった、思い通りにならないのが当たり前、思い通りになったら、それは奇跡、「ありがとう」と感謝をすること。その言葉を聞いて、私の周りは沢山の「ありがとう」で溢れていると思いました。そう思うと、大げさかもしれませんが、今声を発していること、原稿を持つ手があること、そんな当たり前のことがものすごくありがたく思えるのです。
 きついなと思った時に、以前誰かがテレビで言っていた言葉をよく思い出します。「生きてるだけで丸儲け」という言葉です。生かされているという喜び、それは私たちの周りにいる人たちがいて初めて、味わえるものです。何歳になっても、どんな場所であっても、自分が与えられた場所で感謝の気持ちを決して忘れてはいけないと思います。これから、もっと周りの人を大切に、自分を大切に、生きている時間を大切に生きていきたいなとしみじみと思います。
 みなさんは、周りの人や自分を大切にするということは、どのように考え、行動することだと思いますか。ぜひ一度じっくり考えて、今日一日を過ごしていただけたらと思います。