心のとびら

先生から伝えたい言葉

生徒の皆さんの心に留めておいて欲しいことを先生が交代で話をします。

 もう随分前になくなりましたが、佐世保出身の直木賞作家で「白石一郎」という人がいます。海を舞台にした歴史小説が中心で海洋時代小説の第一人者と言われました。
 個人的には、平戸が関係する、三浦按針を描いた「航海者」と鄭成功とその父鄭芝竜を描いた「怒濤のごとく」が気に入っています。
 一度、この人の講演を聴く機会がありました。内容はほとんど忘れてしまいましたが、ひとつ印象に残っている言葉があります。
 彼は早稲田の出身なのですが、
 「『早稲田というとみんなすごいですね』と言いますが、僕らの頃はそんなすごい学校じゃなかった。後輩たちがすごい大学にしてくれた。」
 彼が大学に入ったのは、戦争が終わって5年くらい経った頃の話ですから、当時の大学入試の様子は想像できませんが、この「後輩たちがすごい学校にしてくれた」という言葉は妙に印象に残りました。要するに学校の評判を決めるのはその時その時の生徒だということです。

 自分が卒業した学校のことを母校と呼ぶことがありますが、母校という言葉は高校が一番しっくりくるように思います。3年間という短い期間であっても、自分の意思で、何かに一生懸命頑張った時期だからではないでしょうか。
 通っているときはそんなに意識しなくても、卒業して10年、20年経つと母校の様子は気になるものです。新聞の片隅に小さく載る部活動の結果には自然に目が行ってしまいます。
 さて、私も聖和に来て4年になりましたが、聖和は本当にいい学校だと思います。その理由は生徒の皆さんが明るく元気で生き生きとした表情をしているということです。皆さんひとり一人が、勉強や部活動や習い事やボランティア活動などそれぞれの個性を活かし、将来に向けて充実した学校生活を送っているという雰囲気が伝わってきます。
 この雰囲気は皆さんだけで作り上げたものではなく、これまでの先輩たちが育て、引き継いできた、校風であり伝統です。

 では、10年後「聖和はいいですね」と言われるためにはどうしたらいいのでしょう。それは今いる皆さんがこの校風を受け継ぎ、さらに伸ばしていくことです。毎年、毎年、少しずつ聖和の良い校風を育てていく。それが10年後、20年後の後輩に受け継がれるのです。
 卒業して10年ほど過ぎたとき、周りの人から「聖和っていいですね、すごいですね」と言われたら絶対嬉しい。その評判を生むのは10年後の後輩たちの頑張りですが、そこに繋ぐのは今の皆さんの頑張りであるはずです。難しい事ではありません。ひとり一人が自分の将来のためにできる事、今やるべきことを真剣に手抜きせずやればいいだけです。

 卒業式が近づいてきました。3年生は今人生をかけた最後の戦いに向けて真剣に取り組んでいます。もうすぐ最上級生となる2年生、先頭に立ってよき校風を受け継ぎ聖和を盛り立てていきましょう。